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ふるさとの物語 第154回 八戸・残った浜小屋   ~大津波にも耐え抜く~

2020-04-09 09:41

ふるさとの物語 第154回 八戸・残った浜小屋   ~大津波にも耐え抜く~  八戸市大久喜浜(おおくきはま)の小高い場所に浜小屋がぽつんとたっていた。およそ三間四方の寄せ棟造りで、茅葺きの屋根のてっぺんに芝を土のまま置いていた。このような造りは、かつて南部地方に見られた一般的な民家の造りであったようであるが、浜小屋もそうなのかと感慨深かった。
 この浜小屋は「八戸及び周辺地域の漁撈(ぎょろう)用具と浜小屋」として重要有形民俗文化財に指定されている建物である。内部は土間とイロリのある板間で、漁網、釣具など漁に関する用具が収納されていた。高度経済成長の中で急速に消滅していく漁師の生活文化をなんとか保存しようと、地元の大久喜と隣の法師浜の方々が一九七二年から収集したコレクションであり、収集範囲は六ヶ所村から岩手県北にまで及んだという。浜小屋も収集保存されたものの一つで、いくたびか津波被害があった中で残ってきた浜小屋であった。
 このたびの東日本大震災の大津波にも浜小屋は残った。ちょうど浜小屋から下のあたりまで津波が来たのだという。北日本の太平洋沿岸に現存する茅葺きの浜小屋は、今やこの一棟だけではなかろうか。            

※画像:浜小屋(八戸市大久喜浜)
※この記事は2020年4月2日付の東奥日報朝刊に掲載しました

投稿者:当館元副館長 古川 実