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ふるさとの物語 第159回 ウミミドリ       ~塩湿地に咲くサクラ~

2020-05-29 10:48

ふるさとの物語 第159回 ウミミドリ       ~塩湿地に咲くサクラ~  塩分のある土地では、植物は育ちにくいのが普通だが、何事にも例外はあるもので、サクラソウ科のウミミドリ(海緑)は、海辺の塩湿地にも元気よく育つ、「塩性植物」の一つである。
 高さ10~20センチくらいに伸びた茎には、先が丸く肉質の小さな葉が十字対生(一対の葉が交互に、垂直にずれて配置)している。そして、その各葉の付け根から、サクラに似たピンク色の花を幾重にも咲かせている。満開時には、群生している辺り一面がピンクに染まって見事である。実は、この花、花びら(花冠)と見えているのは萼(がく)の変形であって、「花びら(花冠)は無い」というのがこの植物の特徴でもある。
 写真は、深浦町の岩浜だが、背景に見える岩壁の向こう側は、すぐ日本海の荒波である。周辺には、花が目立たないヒライやトウオオバコ、ハマエノコロなどが細々と生えている。その中にあって、このウミミドリだけは、緑とピンクのコントラストも鮮やかに、実に生き生きと生育する。まるで生を謳歌(おうか)しているように見えて、元気がもらえそうな気がする。

※画像:塩湿地に生育するウミミドリ
※この記事は2020年5月6日付の東奥日報朝刊に掲載しました。

投稿者:当館主任学芸主査 太田 正文


ふるさとの物語 第158回 連絡船復活運航     ~3カ月だけの2隻対面~

2020-05-29 10:47

ふるさとの物語 第158回 連絡船復活運航     ~3カ月だけの2隻対面~  1988(昭和63)年7月9日から、青森市と函館市を会場にして、青函トンネル開通記念博覧会(青函博)が始まった。青函博青森会場では、この写真の中央に見えるように、青函連絡船「八甲田丸」が一般公開され、海上レストランや無料休憩所として利用された。函館市弁天町の函館会場でも摩周丸が公開されている。
 八甲田丸の後ろに見える、もう一隻の船は、青森駅構内の青森桟橋に着岸した十和田丸である。青函連絡船は、同年3月13日を最後に、いったん運航を終えている。
 しかし、札幌市を会場に行われた「世界食の祭典」という博覧会の開幕に合わせ、6月3日から羊蹄丸と、この十和田丸の2隻による復活運航が始まった。この運航は、青函博が終わる9月18日まで続けられた。こうして、約3ヶ月間という短い間ではあるが、このような変わったかたちで連絡船が2隻顔合わせする光景が時々見られることとなった。
 なお、八甲田丸は、今から30年前の1990(平成2)年7月16日、「青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸」として、かつての青森桟橋第二岸壁で一般公開を開始し、現在に至っている。また、摩周丸も、翌年4月26日から函館桟橋第二岸壁跡で一般公開が始まった。

※画像:1988(昭和63)年、青函博青森会場内のアスパム北側。中央の黄色い船が八甲田丸その後方右手に見えるオレンジ色の船が十和田丸。青森桟橋第二岸壁に着岸している。(森内四郎氏撮影、県立郷土館所蔵)
※この記事は2020年4月30日付の東奥日報朝刊に掲載しました。


投稿者:当館学芸主幹 佐藤 良宣


ふるさとの物語 第157回 津軽の「アマビエ」!?  ~社会の不安定時に出現~

2020-05-29 10:46

ふるさとの物語 第157回 津軽の「アマビエ」!?  ~社会の不安定時に出現~  新型コロナウイルスが猛威をふるういま、SNS上で、幕末の妖怪アマビエ(アマビコ)がブームだ。これは1846年に熊本の海に、人魚のような姿で出現し、豊作と伝染病を予言し、自分の姿を写し人々に見せよと告げた妖怪だ。その仲間は、幕末から明治期の日本各地でも出現した。1819年には同じような「神社姫」が長崎・佐賀の海に出現した。最近は、アマビエをデザイン化したイベントや商品開発も盛んだ。
 しかし、それらより前、同種の妖怪が津軽の陸奥湾にも出現していた。1759年3月下旬、平舘村石崎(現外ヶ浜町)で漁網に奇妙な化け物がかかった。全身が薄黒く、人面を持ち、髪のある頭から2本の角が生え、胸に輪袈裟のようなものをかけ、首から下が魚なのだ。当時の人々は「異形の魚」だと噂したという(写真「三橋日記」より)。「異形の魚」は予言はしなかったが、前述の神社姫やアマビエの系譜に連なる存在ではないか。
 このような妖怪やデマは、社会に不安が広がった平安末期や中世、幕末にも流行した。
 「異形の魚」の正体は一体何だったのか。我々に何を訴えかけようとしたのだろうか。

※画像:「異形の魚」(「三橋日記」宝暦9年(1759)条、弘前市立弘前図書館蔵より)
※この記事は2020年4月23日付の東奥日報朝刊に掲載しました。

投稿者:当館学芸主幹 小山 隆秀


ふるさとの物語 第156回 ムカシマンモスの化石  ~新技術で正体判明~

2020-05-29 10:43

ふるさとの物語 第156回 ムカシマンモスの化石  ~新技術で正体判明~  2004(平成16)年12月、むつ市浜奥内漁港沖の陸奥湾で、ホタテの底引き網に奇妙な形の石がかかった。形態の特徴からゾウの下顎の臼歯化石であることはすぐに判明したが、何という種類のゾウなのかを判別することは難しかった。というのも表面が摩耗していたため、種類を決める特徴が分かりにくくなっていたからだ。表面に見えているわずかな特徴からは、ナウマンゾウと考えられた。
 それから12年後の平成28年、化石の内部を、X線CT装置を利用して観察してみようということになった。摩耗していない内部を観察できれば、種類を決めるための特徴がわかるかもしれないというのである。実際、それまでは臼歯化石を特殊なカッターで切断し、内部を観察することも行われていたが、X線CT装置を利用すれば切断しなくとも内部を観察できるというわけだ。
 そして、この装置を使った観察の結果、この化石はナウマンゾウではなくムカシマンモスであることが判明した。なお、ムカシマンモスは、110万~70万年前に日本列島に生息していたと考えられている。新しい技術の導入により、それまでよくわからなかったことが明らかになるという好例であった。

※画像:ムカシマンモスの右下顎臼歯化石(長さ約17㎝)
※この記事は2020年4月16日付の東奥日報朝刊に掲載しました。

投稿者:当館学芸課長 島口 天


ふるさとの物語 第155回 下北3地区の大神楽   ~海への奉納 何を願う~

2020-04-09 09:42

ふるさとの物語 第155回 下北3地区の大神楽   ~海への奉納 何を願う~  下北地方の大神楽をここ数年調査させてもらっている。大間町奥戸、佐井村福浦、同牛滝では、大神楽を海に向かって奉納しており印象深かった。いずれの集落も海に面し、かつては北前船の交易と関わった暮らしがあった土地であり、また現在も漁業を主な生業としている。
 春4月半ば、牛滝では神明宮の例祭に若者たちが神楽を出す。集落の真ん中を通る道路が海に突き当たったところで、防波堤の船が入ってくる方に向かって獅子舞を奉納する。ササラ振りがササラを擦って獅子を囃す。
 夏8月16日から18日までが奥戸春日神社の例大祭であり、山車祭が行われる。神輿渡御(みこしとぎょ)や山車運行を先導するのは奥戸春日大社大神楽である。お通りの日、宿を出発した神楽は、最初に漁港に向かい海を正面に見て神楽を舞う。笛と太鼓の拍子が軽快で優雅である。
 11月29日、旧暦だと神無月の月末である。福浦では出雲から神様が戻られるというので、夕方のすでに暗くなった時間であるが、稲荷神社から浜に神楽が出向き、獅子舞で神様をお迎えする。
 神楽の舞い手、囃し手は海に向かいどのような思いを込めるのであろう。見学者の立場ながら幸多かれと願った。

※画像:奥戸の大神楽(大間町奥戸)
※この記事は2020年4月9日付の東奥日報朝刊に掲載しました

投稿者:当館元副館長 古川 実